XRPの上にも3年

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支払いと決済の間にあるクリアリング

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先日書かせていただいた、支払い(payment)と決済(settlement)の違いをとても多くの方々に読んでもらいました。「わかりやすかった」というコメントもいただき、とても嬉しかったです。ありがとうございます。実は前回の記事で触れた、支払いと決済の間には、クリアリングというプロセスがあります。これは日本語では清算と呼ばれている部分です。クリアリングは銀行間の資金のやりとりを効率化するために生まれたプロセスですが、今回はそのお話をしたいと思います。

銀行口座

このブログを読むみなさんの資産は今どこにありますか?多くの方にとって、大半の資産はおそらく銀行口座にあると思います。お給料をもらったり、家賃が引き落とされたりするのは全て銀行口座からですからね。僕たちが買い物をしたりサービスを利用すると、最終的にはほぼ必ず銀行間での資金の移動が発生します。日頃、どれくらいの頻度でお金を使っているかを想像するとわかりやすいと思いますが、少額なものから高額なものまで、その支払いを処理する回数というのは膨大な数になります。

クリアリング(clearing)とは

クリアリング(clearing)」とは、決済(セトルメント)のために取り交わされた多くの支払指図を集計して、最終的に受け取るべき、あるいは支払うべき差額(決済尻)を算出することである。決済システムの場合には、決済前に行われる支払指図の確認、照合、通知、さらには支払指図のネッティングや決済前のポジションの算出プロセスがこのクリアリングにあたる。

決済システムのすべて第2版 より引用

クリアリングには支払指図の確認、照合、通知というプロセスも含まれていますが、ここでは決済尻を算出することに着目して説明したいと思います。例えば、僕が友人と出かけたとします。1日を過ごす中で、カフェでお茶をしたり、例えば美術館のチケットを買ったり、レストランで夕食をしたりします。毎回、各々が支払いをお店側とすればいいのですが、それだと手間がかかりますね。そういう時にはどちらかがまとめてお店に支払いをします。そして1日の終わりに、最終的にどっちがいくら払ったかを計算して、僕と友人の間で清算(クリアリング)を行い、どちらかが現金を渡して、決済が完了します。難しい表現を使うのであれば、僕と友人の間での複数の債務(支払う義務)と債権(受け取る権利)を相殺して、最終的な1つの債務と債権のセットにするということです。

個人レベルでも行われていることが銀行間でも行われています。それは取引の数が膨大であるため、いちいち決済していては非効率だからです。実際に、1件1億円未満の取引の場合、僕が誰かの銀行口座に振込を行なったとしても、決済が行われるのは当日の16:15です。それまでの間に、すべての銀行間のやりとりをクリアリングして、各銀行が受け取るべき/支払うべき金額を決めて、各銀行が持つ日銀の当座預金口座において決済されるのです。

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全国銀行内国為替制度とは何ですか? 全銀ネット、全銀システムとは何ですか? : 日本銀行 Bank of Japan より

ネッティング

このクリアリングというプロセスにおいて、債務と債権をまとめるネッティングという手法があります。先ほどの個人間での例では僕と友人という2人の登場人物しかいませんでしたが、銀行間のやりとりは全国の複数の銀行が関係してきます。この時に、セントラル・カウンターパーティーという存在が重要になります。これは銀行にとっての親分のような存在で、この親分が全ての銀行間のやりとりをまとめてくれます。直接銀行Aから銀行Bへのやりとりをする代わりに、セントラル・カウンターパーティとだけやりとりをします。下図参照。

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https://www.boj.or.jp/paym/outline/kg34.htm/ より

システミック・リスク

しかし、この便利なネッティングという手法には、リスクがあります。それは、ひとつの銀行の支払いが不可能になった場合、それが他の銀行にも影響してしまうということです。すべての債務と債権をまとめているので、銀行Aと銀行Bの間で支払いができなかった場合でも、本来直接のやりとりをしていない銀行Cにまで影響を与えてしまうということです。

「システミック・リスク」とは, 1つの銀行が支払い不能になることにより、他の銀行の支払が連鎖的にストップし、これが金融システム全体の混乱に波及するリスクである。

決済システムのすべて第2版 より引用

 これを回避するための様々な試みもなされていますが、ネッティングをする際は必ず発生するリスクです。

即時決済(RTGS)

じゃぁ、システミック・リスクはどうやって回避できるのでしょうか?それはネッティングを行わずにひとつの決済をひとつずつ行うことです。これを即時決済(RTGS Real Time Gross Settlement)と呼んでいます。今までは、ひとつひとつの決済に時間がかかるため、クリアリングというプロセスにおいて、債務と債権をまとめていましたが、もし決済がすぐに完了するのであれば、そもそもまとめる必要もありません。

Rippleと即時決済

Rippleが提供しているxCurrentというソリューションはこの即時決済をグローバルに行うことを可能にする技術です。

All members of RippleNet are connected through Ripple’s standardized technology, xCurrent. xCurrent is the rst global real-time gross settlement (RTGS) system that enables banks to message, clear and settle their transactions with increased speed, transparency and e ciency across RippleNet’s global footprint of banks and payment providers.

https://ripple.com/files/ripple_solutions_guide.pdf より

中央銀行の行動原理

日本の中央銀行である日銀の目的の一つは「金融システムの安定」です。それはシステミック・リスクの削減ともいえるのではないでしょうか。ということは、システミック・リスクをなくす、即時決済に強く関心を抱くのは当然のことです。それを世界規模で行おうとしているRippleに興味がないわけはありませんね。

www.xrpsurfer.com

まとめ

クリアリングというのは支払いと決済の間にあるプロセスです。その中でもネッティングと呼ばれる手法のご紹介とそのリスク、また即時決済の入り口のお話でした。実は即時決済に関してはもっともっと知らなくてはいけないこともある気がしています。現時点での僕の理解だとこのような説明になりますが、読者のみなさんの参考になれば幸いです。

参考

日銀のサイトにある、以下のリンクは決済についてかなりわかりやすく書かれています。ここでは省略したネッティングなど重要な考えも書かれているので、ぜひ参考にしてください。

決済の原理 : 日本銀行 Bank of Japan

アフター・ビットコインの著者、中島真志さんの著書です。僕が読んだのは第2版ですが、新しく第3版が出ています。中央銀行の役割や世界の決済システムについても書かれています。入り口だけでもかなり勉強になります。