XRPの上にも3年

Rippleがもたらす「価値のインターネット」の実現を信じて楽しみにしています。

登拝

f:id:xrpsurfer:20190424210353p:plain

不慣れなナビの指示に惑わされつつ、2時間半の運転を経て駐車場に着く。

「車のナンバーを紙に書いて500円入れてください」

久しぶりに持つ鉛筆で、指示に従う。

大きな白い石の鳥居をくぐり、車から降りたての足で一歩ずつ進んでゆく。まず最初に小さい川に架けられた橋の上から眼下に流れる綺麗な水を見て、心が踊る。少しずつ歩くことに慣れていき、石畳を歩いていく。左手には石碑、右手には川の音。15分ほど進んだところで、目的地まで約3kmのうちの0.5kmが過ぎていることを知る。

「なんだ、意外とすぐ終わってしまうんじゃないか」

それならじっくり歩こうと心に決め、また一歩、そして一歩。しばらくすると、石畳は土と落ち葉と根っこに変わる。晴天だったならよかったのになと思う一方で、少しの雨も森には似合うと、ポツポツ降り出した雨を浴びて思う。木の根っこがそのまま階段になっていて、その隙間を落ち葉が埋めているような、そんな道を歩き続ける。昨日、ジムで筋トレしたことを後悔させるような、お尻と腿裏に容赦なく入る刺激。比較的あったかくなってきたとはいえ、山は少し涼しい。遠くなってきている川の音が、雨の音と混ざる。一歩、また一歩。ジワリと汗をかきながら、体を運んでいく。看板に書かれた残りの距離を見る。

「あれ、さっきからあんまり変わってないぞ?」

歩いてきた苦労と、進んだ距離の乖離が始まる。距離は距離であって、苦労とは無関係。今まで多くの人が、長い時間の中で歩いてきたのと同じ道を自分も今歩いている。その道は平坦ではない。山を登っているのだからそれは当然のこと。歩いては振り返り、自分が歩いてきた道を確認する。足元ばかり見ていると忘れそうになるが、確実に進んでいる。先を見るが、道がどこに繋がっているのかはハッキリとしない。ましてや目的地なんて全く見えない。それでもまた歩みを進める。小さな滝にはサンショウウオがいると、看板に書かれている。そんなうまいこと見つからないだろうと思いながら、ちょっと必死に水辺を探す。見つからない。探す前からなんとなくそうは思っていたけど、少し寂しいような。

お尻と腿はすでに悲鳴をあげているが、容赦なく道は続き、容赦なく気持ちは体を動かす。雨は降ったり止んだり。何度か見かける、目的地までの距離を示す看板から与えられるのは希望というよりは、ちょっとした絶望。

「まだ、甘い」

そう山が言っているような気がした。景色を楽しんでいたのは最初だけで、今は自分の右足と左足の着地点を見つめている。だいぶ息が上がってくる。水を飲むために休憩をするが、座ることはしない。立ち上がるための意思が自分にあるのか不安だから。前方も後方も似たような景色になってくる。何十年、もしかしたら何百年も前から生きているような木々に囲まれ、何百年も前からある道を歩いている。二人の男性とすれ違う。自然と、元気な「こんにちは」が交わされる。それ以外、周りには人の気配は全くない。動物の気配も感じていない。雨音と足音、そして遠くから聞こえる鳥の声。目的地まで残り約1km。手が吸い寄せられるように、木々についた苔に触れる。みずみずしくやわらかい。あたりは霧に包まれている。

上の方を見ると、何やら人工建造物の影が見える。ついに到着か。そう思いながら近づくと、そこは人の住んでなさそうな民家。でも手入れはされている。残り700m。まだ、目的地は見えない。汗で湿ったシャツが冷たくなり、しっかりしたインナーを買っておくべきだったと後悔する。暑いんだか、寒いんだか、わからないような状態で、歩みを進める。気持ちが折れているから疲れていると感じるのかもしれないと思い、ちょっと無理に元気に動いてみる。確かに少し元気になった気がする。

根っこと落ち葉の地面が、砂利の地面に変わる。これは目的地が近づいているサインに違いない。丸い木を横にして作られた階段が現れる。どうも登りづらいから、その横の傾斜を登る。遠くから人の声が聞こえる。目を凝らしてみると、人影がある。ついに目的地か。でも道は反対方向に進む。山だからしょうがない。目的地を目の前にすると、どっと疲れが押し寄せてくる。しかしそれ以上の達成感。スカートやスニーカーを身につけた人たちは、おそらく車で登ってきたのだろう。汗だくの初心者登山者の格好をした自分とは全然違う。「すぐ終わる」なんて最初に思ったのは大間違いの2時間もの道のり。それを超えてきた自分を誇らしく思う。ヘトヘトだけど。

三峯神社。ちょうどその本堂を目の前にしようとした時に、12時の鐘の音が鳴る。

「よくがんばりました」

ありがたい。思考ではなく、そんな感情が湧いてくる。